日本企業の海外進出戦略

将来的には国内市場の縮小は間違いない中、海外市場をいかに攻略していくかは、今後10年・20年を見据えたときに必ず取り組まなくてはいけないテーマです。一方で、足元では国内事業が激しい競争に晒されており人材も資金も時間も割く余裕がない、そのように考えている経営者の方は多くいます。コロナ禍で国内事業がダメージを受けている場合はなおさらです。成功するなら取り組みたいが、そもそも成功するかわからない海外進出よりも、いま足元でやらなければいけないことを優先してしまう、というのが経営者の心境ではないでしょうか。

実は、欧米企業は海外進出戦略に対して日本企業と大きく違うアプローチをとっています。

日本企業と欧米企業の海外進出アプローチの違い

米英企業はとにかくスピード重視

当社は多くの欧米クライアントを抱えています。欧米企業(特に米英企業)に共通しているのはスピード感を持って物事を実行していくことです。米英企業は6割程度の勝ち目があればまずはやってみるということを優先します。実際にやってみることで、当初の計画で想定できていないかった部分を見えてきますし、方針の修正もできます。米英企業はまずは自社の製品・サービスが進出国で売れるのか?という点について確認することを最優先します。そしてそのために現地市場をよく理解した人物に任せます。米英企業は多くの場合、進出時には駐在員を本国から送らずに経験豊富な日本人人材を雇います。当社のクライアント企業の場合、日本事業の立ち上げは、①経験豊富な(平均年齢44歳)、②日本人人材に、③競争力のある報酬(年収は基本給1,000-2,000万円+成果報酬)を提示しています。優秀な人材を確保し、まずはやってみる。成功の見込みが高まればさらに投資をする、難しければ撤退するという非常にダイナミックな意思決定を行います。

日本企業はとにかく失敗の回避

一方で日本企業は成功確率を90-95%程度まで高める(あるいは失敗確率をできる限り低くする)ことを優先する企業が多くあります。その結果、時間をかけて検討するもののなかなか実行には移さない(移せない)ことが多くなります。特に一定規模以上の会社となると、トップではなく事業部が海外進出を担当することになります。社内で稟議にかける際には失敗時のリスクに関する質問が多くでますので、先回りしていろいろな調査を行います。結果として検討に2-3年かけるというようなことが数多く発生します。また日本企業は海外進出を行う際に、現地法人設立を前提に事業計画を作成します。この現地法人設立というのは実は非常にやっかいな問題です。現地法人設立を前提にすると、現地の法制度・税制に関しての調査が必要になり、長い時間がかかります。また事業が失敗した場合には現地法人の清算を伴うので、よりリスク管理に慎重になりがちです。また、現地法人の責任者として日本人を駐在員として派遣することになり、高コスト構造となります。駐在員は現地市場を理解しているわけではないので、現地市場の開拓にはあまり貢献できません。実際の現地市場の開拓には現地社員を雇用しますが、駐在員が高コストなこともあり、若手の安い人材を採用しがちです。こうした結果、現地市場に精通していない日本人駐在員と経験の浅い現地若手人材という組み合わせができあがります。こういった人員構成で市場を開拓出来るかというのは、外国企業が同様の布陣で日本に進出した場合を想像すれば、あまり有効ではないということはご理解いただけると思います。

日本企業の海外進出はどうあるべきか?

海外企業が積極的に海外進出をしていく中で、従来のように時間をかけて慎重に海外進出計画を策定していては競争に勝てません。日本企業も今まで以上に積極的に海外進出を進める必要があります。以下の3点を考慮することで、日本企業の海外進出を促進することが可能になります。

  1. 海外進出における投資額(最大損失額)を確定する
  2. 実行のスピードを重視する
  3. 現地人材を活用する

1. 海外進出における投資額(最大損失額)を確定する

海外進出は失敗の可能性のある投資であると割り切り、自社で失っても良い損失額を経営陣がトップダウンで決定することが重要です。投資額(=最大損失額)を確定することで絶対に成功させなければいけないという呪縛から解放されます。事業責任者に成功確度を求めすぎると、そもそも海外進出自体を進めることができません。経営陣がトップダウンで投資額を決定し、その投資額で成功可能性の高いプランを事業責任者が策定するというアプローチが必要です。

2. 実行のスピードを重視する

マクロの視点から成功の可能性が一定程度あれば、まずは実際に人を置いて事業を行ってみるということが重要です。日本から調査を重ねてもわかることには限度がありまます。百聞は一見に如かずの諺どおり、まずその目で見て体験して、そこで得られた知見をもとに方向性を修正して正解に近付けていくことが大事です。事業計画が全て想定通りいくことなどないので、計画を詳細に作る行為自体は社内的な説明のため以上の意味を持ちません。

3. 現地人材を活用する

B to CでもB to Bでも現地の顧客を対象とした事業であれば、顧客開拓は現地の優秀な人材にまかせるべきであり、現地人材の優劣が事業の成否を決めるといっても過言ではありません。欧米だけではなく、アジアにおいても優秀な人材を取り合いであり、給与水準は日本と変わらないことも珍しくありません。アジアだから安い金額で雇いたい、日本とのバランスを考える必要があるといった観点ではなく、その国で成功するために必要な人材に競争力のある報酬を提示する必要があります。全体の投資額は決まっていますから、そのためにはそもそも費用の高い駐在員を本当に派遣する必要があるかについても再度検討が必要です。

GEOの活用も検討

欧米企業では15年ほど前からGlobal Employment Outsourcing (GEO)モデルにより、現地法人を作らずにトライアル進出をするアプローチが普及しています。GEOモデルによりまずは事業が成立するかどうかの見極めにフォーカスし、事業が成立する見込みが立った時点で現地法人を設立し、本格進出に移行するケースが増加しています。GEOモデルを活用することで、①迅速な海外進出、②煩雑な管理業務の回避、③撤退時のリスク管理が可能になるためです。自社の海外進出目的から現地法人設立に拘ることなくGEOモデルの活用も含めて柔軟な海外進出モデルを検討することが求められます。

最後は経営者の意思

海外進出が成功するかどうかは、最終的には経営者の「意志」によるところが大きいものです。そもそも失敗の可能性が低くない海外進出に挑戦し、それを推し進める決定は経営陣にしかできません。トップダウンでの経営陣の決定こそが、海外進出の成否を分けるものなのです。

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